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写真集『高架下建築』

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団地・工場・ジャンクションなどの都市風景の写真集でお馴染みの、写真家の大山顕さんが、東京・横浜・大阪・神戸で撮影した鉄道高架下建築の写真が多数掲載されている『高架下建築』(洋泉社刊、定価1,700円)という写真集を、先日購入しました。

誰が見ても一目で「橋」と分かる吊橋・斜張橋アーチ橋・トラス橋などと違い、街中を延々と何キロも続く陸橋の高架は、一般にはあまり「橋」とは認識されていない構造物ですが、鉄道高架にしろ道路高架にしろ、高架は、桁橋という構造の橋であり、その橋の下にこれだけ多様な建築物が“昭和の風情”を色濃く漂わせながら存在している事に、私は何となく嬉しく感じました(笑)。

この写真集を一読する事によって、全く統一感のない雑然とした感じ、日々の生活観を感じさせる長屋のような雰囲気、高架下建築ならではの強引な構造(例えば、地面と高架との間が2階建てにしては高いが3階建てにしては低いという場合、3階の階層が1・2階に比べると極端に低い、2.5階のような構造になっています)、高架下建築ならではの独特な形状や配置を見せるドア・窓・郵便受け・配管・植栽などの各種アイテム、ひび割れや染みなど時代を感じさせる壁、無造作に塗り重ねられたペンキや色違いのベニヤ・トタンによるパッチワークスタイルの壁など、知られざる高架下建築の世界を垣間見る事ができます。

この写真集はあくまでも高架の「下」がメインなため、高架の「上」の風景(線路や列車などの写真)は一切掲載されていませんが、「へぇ、いつも乗っている電車の下には、こんな奥深い世界が広がっていたのか!」と感じられるため、きっと鉄道好きな人も楽しめると思います。
また、巻末には「高架下建築のしおり」として、掲載された高架下へのアクセス案内や鑑賞ポイントなども載っているので、この写真集に掲載されている高架下建築を実際に見に行こうと思った時はとても便利です。
橋好き、鉄道好き、雑然とした都会の風景や“昭和の風情”が好きな方なら、絶対に買って損はない、とても面白い写真集です!
by bridgelove | 2009-10-22 06:31 | 書評